ハンガリーのワイン産地

ハンガリーのワイン産地

ハンガリーワインの産地と特徴

ハンガリーには22の公式ワイン産地があり、それぞれ独自の気候や土壌、ブドウ品種を活かして多様なワインが生産されています。以下に、各産地の名前を整理してご紹介します。

  1. ショプロン(Sopron)
  2. ナジ・ショムロ(Nagy Somló)
  3. ザラ(Zala)
  4. バラトン・フェルヴィデーク(Balaton-felvidék)
  5. バダチョニ(Badacsony)
  6. バラトンフェレド・チョパク(Balatonfüred-Csopak)
  7. バラトンボグラール(Balatonboglár)
  8. パンノンハルマ(Pannonhalma)
  9. モール(Mór)
  10. エチェク・ブダ(Etyek-Buda)
  11. ネスメーイ(Neszmély)
  12. トルナ(Tolna)
  13. セクサールド(Szekszárd)
  14. ペーチ(Pécs)
  15. ヴィラーニ(Villány)
  16. ハヨーシュ・バヤ(Hajós-Baja)
  17. クンシャーグ(Kunság)
  18. チョングラード(Csongrád)
  19. マートラ(Mátra)
  20. エゲル(Eger)
  21. ブュック(Bükk)
  22. トカイ(Tokaj)

各産地は、それぞれが特徴的なワインを生産しており、ハンガリーの多様性を体現しています。例えば、トカイ地方は世界的に有名な貴腐ワイン「トカイ・アスー」を生産し、ヴィラーニ地方ではフルボディで芳醇な赤ワインが知られています。その他の産地も、地元固有の品種や革新的なワイン造りで高品質なワインを生産しています。

歴史

ハンガリーのワインの歴史は、紀元前に始まったとされていますが、本格的なブドウ栽培は古代ローマ人によって伝えられたといわれています。5世紀頃には、既に定住していたハンガリー人の祖先であるマジャール部族が広大なブドウ園を開拓していたことが、当時のビザンチンの百科辞典に記録されています。

ハンガリー語でブドウを「Szőlő(ソーロー)」、ワインを「Bor(ボル)」と呼びます。この呼称がラテン語を語源とする「Vin」「Vino」「Wine」と異なることから、古代ローマ人が本格的なブドウ栽培を広める以前から、ハンガリーの祖先がワインを造っていた可能性がうかがえます。

ハンガリーを代表するトカイワインは、フランス王ルイ14世が「王のワインにして、ワインの王」と称賛したことで知られています。

1867年のハプスブルク帝国の解体により、ハンガリーワインの生産と輸出は自由化され、フランスやイタリアに次ぐ世界第3位のワイン生産国となりました。しかし、1875年から始まったフィロキセラ禍により、生産量は6分の1にまで減少する大打撃を受けました。その後、質より量を重視するソビエト時代を経て、1989年の共和国体制への転換により、外国資本が流入。近代的なワイン造りが導入され、技術の進歩によって非常に質の高いワインが生産されるようになりました。

2004年にはEUに加盟し、ハンガリーワインはヨーロッパ各国から注目されるようになりました。こうして、古い歴史と新しい技術が融合し、現代のハンガリーワインが誕生したのです。


気候風土

ハンガリーは主に大陸性気候で、日本と同じように四季があります。夏と冬の気温差は大きく、夏の平均気温は約22℃ですが、35℃を超える猛暑もあります。一方、冬は厳しく、1月や2月の最低気温はマイナス10℃近くになることもあります。年間の平均気温は10~11.8℃程度で、北部の産地では9.5~10℃です。日照時間が10℃以上の日は年間185~200日ほどあります。

ハンガリーワインの産地の緯度は北緯45.5度~48.5度で、北海道より少し北に位置します。この緯度帯は、南部がイタリアのピエモンテやフランスのボルドー、北部がブルゴーニュと同じ緯度にあたります。標高は主に100~300mと低めで、年間降水量は470~700mmと少なめです。特に南部では乾燥した年が多く、ブドウの糖度が高まり、フルーティで深みのある味わいのワインが生まれます。


ワイン法と品質分類

1956年、ハンガリーでもフランスのアペラシオン・コントローレ(AOC)に相当するワイン法が制定され、14の生産地区に分類して原産地の品質を保証してきました。その後、1994年には20地区に分離され、1997年の改正ワイン法により22の指定地域に分類されました。2009年8月1日に施行された新しいEU規制に基づき、2011年からハンガリーワインは以下の3つの品質カテゴリーに分けられています。

1. Wine(地理的表示なしのテーブルワイン)

ラベルに「Asztali Bor(テーブルワイン)」または「Magyar Bor(ハンガリーワイン)」と記載されます。

2. PGI(Protected Geographical Indication, 地理的表示保護ワイン)

ハンガリー語では「OFJ(Oltalom alatt álló Földrajzi Jelzés)」と呼ばれます。PDOよりも規定が緩やかで、製造方法や熟成過程よりも、ブドウの栽培地域を重視しています。代表例にはバラトン湖周辺(Balaton)、ドナウ川とティサ川の間(Duna-Tisza Köze)、ゼンプレーン地方(Zemplén)などがあります。

3. PDO(Protected Designation of Origin, 原産地呼称保護ワイン)

ハンガリー語では「OEM(Oltalom alatt álló Eredetmegjelölés)」と呼ばれ、32の指定地域があります。ブドウの栽培密度や収穫量、品質、熟成に関する厳しい規定があり、代表的な産地にはヴィラーニ(Villány)、エゲル(Eger)、トカイ(Tokaj)などがあります。


DHC(Districtus Hungaricus Controllatus)ワイン

2003年に導入された、PDO内の任意のサブカテゴリーです。これは、国内で最も厳しい品質管理エリアを特定し、各産地の個性を強調するためのものです。DHCを取得するには、地域全体が作成した特定の規則をHegykozsegek Nemzeti Tanacsa(HNT)に申請し、承認を得る必要があります。

ラベルには以下の名称が使用されます:

  • Vedett Eredetű
  • Districtus Hungaricus Controllatus
  • DHC

これらの規則には、ブドウの栽培密度、収穫量、品種、最低熟成規定、熟成用の容器などが厳しく規定されています。DHCは必ずしも最高品質のワイン地域を示すものではありませんが、非常に厳格な基準をクリアした地域に与えられる称号です。