最古の貴腐ワイン

トカイ・アスーの歴史

トカイ・アスーが初めて作られたのは、16世紀から17世紀頃とされています。
1630年、ハンガリーのトカイ地方で、サラ・ムトン(Szepsi Laczkó Máté)というプロテスタントの司祭が、現在のトカイ・アスーの製法を完成させたとされ、これが貴腐ワインの最古の記録とされています。
トカイ・アスーは「王のワインであり、ワインの王」とも称され、多くのヨーロッパの宮廷で愛されました。特に、フランス国王ルイ14(1643-1715)が愛飲していたことでも有名です。17世紀のヨーロッパで砂糖を使った菓子やデザートは大変人気で貴族社会に広まりました。砂糖は「白い金」とも呼ばれ金や銀と同等の価値を持つほどの高価なものと言われています。そんな時代背景もあって黄金に輝く、甘い貴腐ワインは大変貴重なものでした。

ハンガリーのアスー(貴腐ワイン)はプットニョシュ(puttonyos)という単位で表されていました。プットニョシュという言葉は、収穫した貴腐ブドウを運ぶための約25〜26kg入りの背負い桶、プットニュ(puttony)に由来します。そして貴腐ブドウを、136リットルの樽に何杯分入れるかによって、ワインの甘さが決まりました。2013年のワイン法改正まではこのプットニョシュが甘さの単位として使われ3から6プットニョシュが存在し桶(プットニュ)の量が多いほど甘く、価値がありました。

現在のワイン法

トカイ地方は、貴腐ワインを生み出すための理想的な環境を持っています。ハンガリー北東部に位置するトカイ地方は、独特の地形と気候条件があります。秋には川からの霧が発生し、貴腐菌(ボトリティス菌)がブドウに広がりやすくなります。貴腐菌に感染したぶどうは果皮が薄くなり水分が蒸発します。水分が蒸発することで糖分や香り成分が濃縮されます。

収穫は貴腐菌が適度に広がった状態で慎重に収穫をしますが、収穫は一度にできるわけではなく、一房ずつ、一粒ずつ手作業で行うため大変な手間と時間がかかります。何度も同じ場所をまわっていい状態になったものを収穫します。貴腐菌の広がりは気候によって大きく変わり全く収穫できない年もあります。その為、砂糖がふんだんにある現代でも貴腐ワインは黄金のワインと称されます。

トカイ・アスーの味わい

トカイアスーは一般的に甘いほど価値は高くなりますが、トカイの貴腐ワインのおいしさの秘密は甘さだけではありません。トカイ地方で貴腐ワインに使用されるフルミント、ハールッシュレヴェリュ、イエローマスカットの土着品種にあります。これらの品種のドライワインを飲んでみるとその特徴は顕著に表れます。フルミントはシャープで爽やかな酸味、フレッシュな青りんごのような味わい、ハールッシュレヴェリュはフルミントよりは少し穏やかで酸味が口の中全体に広がる豊潤な果実味。イエローマスカットはフルーティで爽やかで抜けるようなすっきりとした味わい、マスカットそのものです。これらの酸味と果実味が甘さに加わり絶妙なハーモニーを奏でます。

トカイ貴腐ワインのもう一つの秘密はその特異な土壌にあります。トカイ地方はもともとパラテティス海と呼ばれていた内海で中新世(約2000万年前~500万年前)の火山活動で隆起してできた山地や火山性の土壌です。現代では活火山はありませんが、海があった時代の堆積物(石灰岩や貝殻化石など)が、トカイ地方の地層に残っていて、火山活動の時に形成された火山岩が現在のトカイ地方の土壌の基盤を作っています。一部では火山岩に覆われ果樹の生育に良い環境ではありませんが、この特異な土壌こそがこれがトカイの独特のブドウ栽培環境に貢献しています。ブドウの根は火山岩をぬって土壌に根を下ろし、トカイワインの特徴でもある、ハーブやミネラリーな味わいを加えてくれます。

甘味、酸味、そしてミネラルの調和に、オーク樽由来の豊かなコクが加わり、口の中で織りなす風味は言葉では表しきれないほどの奥行きと広がりをもたらしてくれます。

自然が生み出した奇跡の味わいを、ぜひご堪能ください。

トカイワインの一覧

甘口貴腐ワインの一覧

おすすめのトカイワイン

トカイ・ヘートソーローのアスー5プットニョシュ2000年

9900円(消費税込み)

2000年のトカイ地方は、貴腐ワインにとって理想的な気候条件に恵まれ、特別なヴィンテージが生まれました。この年の貴腐ワインは、現在では世界でも非常に希少な存在となっています。

それから25年の歳月が流れ、瓶内で熟成を重ねたこのワインは、芳醇で奥深い味わいへと進化を遂げました。一口含むと、濃厚で複雑な香りが広がり、余韻まで楽しめる極上の仕上がりです。時を超えた至高の味わいを、ぜひご体験ください。

Serpens Tokaji 6 Puttonyos Aszú 2017

8430円(消費税込み)

6 プットニョシュはエッセンシアを除いたハンガリーの貴腐ワインランクで最高ランクとなります。プレミアムな甘口ワインで、特にそのリッチでバランスの取れた風味が特徴です。このワインは、フルミントブドウから作られており、トカイの典型的な特長である活き活きとした酸味と、ボトリティス(貴腐)による複雑なフレーバーが感じられます。一人で栽培を行っている為、コストが抑えられワインも6プットニョシュとしてはリーズナブルな価格となっていますが、最高品質です。なかなか手の届かない6 Puttonyos Aszú ですがこちらで試してみてはいかがですか。

トカイヘートソーロー フルミント ビオ ドライ 2020

2950円(消費税込み)

フルミントのブドウ品種はトカイのワイン産地で最も栽培されているブドウでエレガントなミネラル豊富なドライワイン、そして甘口のレイトハーベストと貴腐ワインも作ることができる重要な品種です。 フルミントには高い糖分も、素晴らしい酸味も出ることで有名です。 フルミントはトカイ地方の非常に多様なテロワールを表現するのに最適なブドウ品種です。 このビオワインは農薬、化学薬品添加物を使わずに葡萄を育て、収穫しています。 フルミントの品種を使って、葡萄がちょうど実った状態で収穫され、8か月間タンクに発酵させます。貴腐ワインになる手前の若い状態で収穫されたワインで樽も使用しておらず、フルミントの特徴である、シャープな柑橘系の中にもふくよかなフルーツも感じられ、酸とミネラルの絶妙なバランスを感じることができるワインです。

ボット クーチャール 2017

4200円(消費税込み)

ハンガリーの土着品種、フルミントを味わったことのある方でもハールシュレヴェリュ100%を味わたことのある方はほとんどいらっしゃらないと思います。トカイ地方の豊かな自然環境と土壌を活かし、伝統的かつ持続可能な農法を採用しています。化学肥料や農薬を極力使用せず、ブドウの個性を引き出すことに注力を置くことと地元の品種を大切にするBOTTワイナリーが手掛けたハールシュレヴェリュ100%ワイン、Kulcsár。貴腐ワインに使われるだけあってドライな中にも蜂蜜の様なニュアンスとハーブが香りにも味わいにもあります。酸味はフルミントに比べると柔らかく広がる、優しい酸味です。

セルペンス トカイスイート 2022

1940円(消費税込み)

主にフルミントブドウを使用しており、遅摘みのワインです。房ごとの収穫になるので少しは貴腐ブドウも入りますが量は少ないと思います。トロピカルフルーツ(パイナップル、マンゴー、熟したピーチ)やアプリコットの香りが感じられます。このワインは、甘さと酸味がバランスよく調和しており、飲みやすく、リフレッシュ感のある後味が特徴です。言葉や文字で表現すると「甘さと酸味のバランスが良く」となりますがこれは本当に絶妙です。とにかく試していただきたい一品です。

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